モラルレスFPに思うこと

執筆者:昆 知宏
        

「変額保険を毎月5万円積み立てればあなたは救われます。」

先日お越しいただいた相談者の方が、FPからこんなアドバイスを受けたそうです。

「ライフプランを作成したところ老後に2,000万円以上の赤字になります。それを解決するためには今から変額保険を積み立ていくことが最適解です。いいですか、変額保険のことをYouTubeで調べてはいけませんよ。私の言うとおりにすることで問題は解決です。」

突っ込みどころ満載のアドバイスなのですが、この話にはもう少し先があります。

あまりにも悪質であったので、FP側のモラルはどうなってしまっているのか。

そもそもその人はFPではなく単なる金の亡者なのではと思ってしまったのです。

事実は真逆であった

この相談者がいらした前提には、そのFPが信用できないからという背景がありました。

YouTubeで変額保険を調べてはいけないと言われたら、それは壮大なフリだと普通は思いますからYouTubeで家に帰ってから早速調べてみたそうです。

そうしたら自分にはとうてい合うものではないとその方は判断されたそうです。

そこでセカンドオピニオンとして相談先を探していたという経緯でした。

ヒアリングをしてライフプランを作ってみると、老後に問題は全くありませんでした。

資産運用などしなくても5,000万円以上の貯金が余裕でできる収支で、どちらかというと若い今の資金繰りがまあまあタイトな感じでした。

夫婦共働きであればよくみるライフプランの波形かと思います。

つまり苦しい今を無理して、余裕のある未来に資産を投げるという愚の骨頂ともいえるアドバイスをしていたことになります。

別の人のデータと間違えてライフプランを提案したのか?と少しかばいたくなるくらいです。

変額保険は規制が入りそうな雰囲気

最近、保険の研修で聞いたのですが変額保険の意図的な短期払い済み誘導にペナルティが入るようになったようです。

毎月5万円とか10万円とかをがんばって一気に短期で積み上げて、ある程度塊が完成したらその後払い済みにしてしまうという手法です。

投資では元本をいかに早く作ることが目的なので、NISAであればそれは良いと思います。

変額保険では100%募集人の手数料最大化が目的ですから代理店向けに規制が入るのも無理がありません。

この手の売り方を積極的に行ってきた募集人に対しては、もし顧客がそれを実行すると戻入が発生するために、募集時には推奨していた行為を今度はとめなければならないという矛盾が生じ、一貫性がなくなることにより信用の崩壊になります。

あまりにも度が過ぎた募集人には仕方がないところがありますが、募集人をかばうわけではないのですが、ルール内でOKとなっていたことに途中からルール変更してペナルティを科すというのは、事前にモラル教育を怠っていた販売元にも責任があるのではないか、少なくとも按分両成敗じゃないのかなと感じました。

そういう契約でも喜んで業績を作っていたのは誰?と思ってしまいます。

この件も事後処理を誤ると金融庁案件になってしまいそうで、変額保険もそろそろ大きな規制や情報開示が入ってきそうな雰囲気になってきました。

モラルレスFPになったら終了

私は住宅関連が専門なので保険は、収入保障保険や火災保険の販売がほとんどです。

ご存知の通りこれらの保険はそもそも保険料が安いため、保険だけで食べていくのは正直しんどいです。

保険で食うには、夢を見るには、変額か一時払いを売るというのが今の募集人界隈では共通した認識かと思います。

中には、NISAがよく分からないから保険で運用したい、ある程度任せられる人、伴走者が欲しいという意向を持つ人もいます。

そういう人には、丁寧にフォローしてくれる募集人から変額保険に入ることも、私は悪くない選択肢だと思います。

実際私の顧客でも、NISAをした方がいいとアドバイスをしても、よく分からないし、管理もしたくないから面倒を見てくる保険を提案してほしいという人もいます。

保険は使いようで、別に変額保険が悪いわけではありません。

でも、手数料欲しさゆえに、ウソのライフプランを作ることや、自分の利益の最大化だけを考えるFPが増えればこの業界もまた規制され、良かった部分にもふたをされてしまいます。

結局、自分勝手の人が増えると、良いものもまた使えなくなるのです。

顧客の資産の最大化よりも、自分の資産の最大化に目が行ってしまうようになると、FPとしての寿命ももう長くなくなると思って仕事をするべきですね。

変額保険を売りたい人ほど、商品の説明でなく、自分が伴走者として適切であるという証明をプレゼンした方が私は良い結果になるのではないかと思いました。

また、その覚悟と責任を追えることも必要です。

長く付き合えるサポーターを求めている人は実際多いです。

FPのテキストの最初のほうにも、FPは顧客との信頼の構築がすべてと書いてありますよね。

昆知宏
新潟の住宅会社に営業として勤めた後、『特定の会社に属さずに、客観的な立場から住宅購入をサポートできるFPになりたい』という想いの元独立。住宅購入を専門とするFPとして、新潟でこれから家を買う方への相談を行っている。コンサルティングフィーは土地建物価格の1%と高額ながら、多くの顧客に支持されている。

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