10年目でようやく見つけた、ちょうどいいFP業

執筆者:昆 知宏
    

独立して10年、ようやく「土日が休める」生活にたどり着きました。

個人的に目指した理想に今年はかなり近づくことができたと言えます。

といっても、毎週土日が完全休みというわけではなく、「土曜か日曜のどちらかを休める」くらい。それでも、以前は土日も朝から晩まで仕事、家に帰っても資料作成やメール対応に追われていたことを思えば、大きな変化です。

ではなぜ、そんな働き方に移行できたのか。

その理由のひとつは、意図的に「新規顧客を減らした」ことでした。

オンライン相談は基本お断り、活動エリアも限定(狭めた)、電話番号の非公開、WEBフォームのみの問い合わせ、リアルセミナーの廃止……。これらは集客に逆行するようでいて、実は“自分に合う人”だけに絞るための戦略でもありました。

結果的に、問い合わせは減りましたが、質は上がりました。

「それでも相談したい」と思ってくれる方だけが来てくれるため、関係の継続率は大幅にアップしています。一見すると来客数は減ったように見えても、顧問契約や長期契約に結びつく確率が高まり、収益は集客数に比例して大きく落とさずに済んでいます。

つまり、以前よりも時間のゆとりを確保しながら、収入も前ほどではないながらも確保できているという理想的なバランスが生まれたのです。

本当に売り込まないのは難しい

この変化が、自分自身の営業スタンスにも影響を与えました。

第三者FPとはいえ、自分のサービスを売り込まないと収益は作れません。そのためクロージング資料を作り込み、自分のサービスをしっかり売り込む必要があります。これができないFPは食べていくのは困難だと思います。サービスに自信があるからこそ、しっかりと売るというマインドセットを自分は独立前から徹底的にマインドセットしました。

でも今はガツガツ前のめりで売り込むことはしなくなりました。

余裕を持って接することでお客様の信頼感が高まり、結果として成約率も上昇し“余裕”が、むしろ好循環を生み出してくれました。

もちろんクロージングはしっかり考えて実行するのですが、よりナチュラルな感じになって変に疲れなくなりました。そういうことを考えると、売り込みってやっぱり疲れるのです。

本来FPはミニマムに活動できるのがメリット

10年やっているとやはり周りの人で市場から消えた人もいます。

なんとなく見ていて思ったのは、収益への執着が強すぎる人にそういう傾向があるように感じました。

私の場合は、開業直後から損益分岐点がとにかく低いことが幸いし、メンタルの管理は楽でした。開業してから一度も、損益分岐点を下回っての決算はありません。理由はシンプルに目標が高くないからです。せっかく会社を辞めたのだから目標は低くても別にいいし、昨対比なんて毎年上回れるわけがありません。あの考え方は本当に何なのでしょうか。

とはいえ、調子の良かった初期のときに拡大志向を思った時もありましたが幸か不幸かその時にいい人に出会うことができませんでした。自分にはそういう才能はないと即座に決め、拡大ではなく仕事を極めるという線に舵をきったのもいい判断だったと思っています。

そもそもFP事務所はミニマムに開設・運営できます。

経費なんてほとんどかかりません。

これから始めようと思っている方もここは最大のメリットだと思います。

だから報酬を欲張らなければ、もっと自由にできる仕事であり、自分の時間はやりようによってはかなり作りやすいと言えます。

報酬をどう決めるか?

報酬の話をもう少し踏み込んでお話しすると、私は「世代の平均年収の中央値」を意識して役員報酬を設定しています。世間と金銭感覚を一致させておきたいとの理由もあります。

そこがずれていると、家計改善もミクロの視点で見れないし、生活者の視点がないとアドバイスも響かないと考えるからです。

地域の中央値年収+経費であれば、年の半分を使わずとも達成可能な時もあり、仮にそうなれば残りの半年は“整える期間”として余裕を持って使えます。

仕事が好調ならどんどんやればいいし、自分の時間を優先したいなら押さえればいいというようにコントロールがしやすくなります。

こういう感じで自分の時間を「自分に合う顧客」に重きを置けるようになった今、まず自分が楽しくなり、関わる人の質が変わり、仕事の満足度も大きく変わりました。

必要としてくれる人とだけ丁寧に関わる。

これこそが、長く続けるための一番のモチベーションなのだと、今になってはっきりと言えます。

豊さを人に伝える前に自分が豊かになってみたい

というわけでFP2.0、3.0への進化を求められるのをひしひしと感じる今、まずは自分が体験したことを人に伝えていきたいと私は考えています。

つまりタイムリッチなFPを目指しているわけなのですが、今年できたこの時間をどういうふうに使っているかというと、とにかく自分の体を動かす、自然と向き合うということに重きを置いています。そのうえで、仕事以外にも好奇心を持てていることにとても充実感を覚えています。これは幸福度に直結する要素と言えるでしょう。

同時に春から大学での授業を始めているのですが、これは採算的には全く割に合いません。でも社会貢献活動によって得られるものが何かを知りたいという探求心で行っています。

こういった“自然や社会との接点”も増やしながら、仕事以外の領域でも自分なりの役割や自分の目指すものを見つけていきたいと思っています。

このような経験をシェアできるメルマガの存在も、今の私にとっては大切な社会貢献のひとつです。同業の皆さんと想いを共有しながら、次のステージへ進む過程をまた楽しんでいきたいと思います。いつもありがとうございます。

PS

来週のメルマガはお休みします。良い夏季休暇をお過ごしください。

昆知宏
新潟の住宅会社に営業として勤めた後、『特定の会社に属さずに、客観的な立場から住宅購入をサポートできるFPになりたい』という想いの元独立。住宅購入を専門とするFPとして、新潟でこれから家を買う方への相談を行っている。コンサルティングフィーは土地建物価格の1%と高額ながら、多くの顧客に支持されている。

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