執筆者:昆 知宏
FPの話を30分聞いてもらえれば、15,000円のお値引き券を差し上げます。
もしこんなオファーを受けたら、あなたはどう思いますか?
みなさんご存知、某量販店でのお話しです。
私は真っ先に私もFPなのでと言って断るか(なんか頑張ってもらって申し訳ない気持ちになるし)、とはいえ購入したものがその場で15,000円も値引きされるのであれば妻にお願いして話を聞いてもらうかもしれません。
SNSではこの手の、FPの話を聞いて商品券などをもらうことを“耐久バイト”という表現で揶揄されています。30分で15,000円なら、時給換算30,000円ですからね。
あー、なんてお互いの時間が無駄なのだろうか…と思いつつも、15,000円もらえるなら無駄とも言えないし、FP側も商談の練習ができ、もしかして成約にもなるかもしれないと思えば、双方のニーズが成り立っているわけです。
話の内容は猛烈な保険トーク
節約系SNSにはこういう類の話がよくあります。
ポイ活みたいなものですよね。
個人情報を提供する代わりに報酬を得るわけです。
肝心なFPの話が何かというとそれはもう十中八九、保険なわけです。
持ち時間が30分しかないから、オーバートークなんて日常茶飯事でしょう。
相談者の意向把握の時間すらなく、猛烈に商品PRをするしかない。
でもいきなり商品PRでは相手もドン引きなので、“免許センター”テクニックから入る人が多数のようです。
免許センターテクニックとは、悲惨な映像を見てもらい、注意を促しニード喚起する方法。
短時間で相手の感情を大きく揺さぶり、話を聞いてもらうテクニックです。
保険のセールスの場合も同じく、この手の方法はCMにも使われていますよね。
何とか次アポを取りたい
とはいえ、量販店のFP強制紹介は、相談者のニーズがあるケース(相談者がポイ活目当てであっても自分で申し込んでいる)でもなく、さらにハードルが高いものです。
普通に買い物に来て、話を聞けば15,000円もらえるというのは、お客さんの立場からすれば本当に話を聞くだけだったらいいですよとなりますよね。
10回で15万円の商品券費用が発生するとなれば、10組に1組でもそれなりの保険契約になれば、とんとんくらいでしょうか。
15,000円をもらうという行為から相談者には“返報性の法則”の原理も働くのでもう少し成約率が上がるのでしょうか。
商売として成り立つからやっているのだと思うのですが、たくさんの疑問が生まれます。
FPとしては15,000円の集客経費をかけてもらっているわけですから、結果を出さないといけないわけですし、そもそも自分の収入にもつながらないから結果は欲しいところですし、そういうFPの心理まで運営者側は掌握しているとなると、なるほど心理面において結構考えられているシステムで、回せば回すほど収益が生まれるというのもだんだんと理解できてきます。
ビジネスモデルは多種多様
FPになりたての人が、顧客との経験を積むためにこの手のシステムを利用することも私は結構ありかなと思っています。
少しスパルタ的ですが、やはりリアルで人に会って、話をしないと、経験を積まないと相談業務は成り立たないし成長できません。
自分で集客したお客さんとだけできるのは最高の幸せなわけですが、このあたりはマーケティング能力が求められるので、勝手にお客さんが来るという状況を作るにはそれなりの努力が求められます。
そういうことよりも特に相談面や営業能力に自信がある人は、手っ取り早く収益を作るにはとにかく見込み顧客に出会いに行くシステムの中に入っていくことも一考です。
きっとこのシステムを活用して収益を上げられるFPは、いきなり保険の話は絶対にしないはずです。いわゆる免許センターテクニックも使わないはずです。
お金を増やすか、コストカットをするというフックから入るか、相手のことをとにかく聞く時間に27分、自己プレゼンに3分。
みたいにするかもしれません。
もしあなたが、量販店から相談のニーズもなかった一般顧客をいきなり振られて「持ち時間30分です。次のアポを取ってくださいね!」と言われたら何をするのか?
これをぜひ考えてみてください。
実はこのワークはとても勉強になりますよ。
できないFPの方が多いはずです。
だから積極的にトライしているFPはその経験はいつか独立した時にも糧になると思いました。