フルコミ営業に学ぶ“挑戦する人生”の美学

執筆者:昆 知宏

    

私の知人で、これまで保険の事務をされていた方が、フルコミッション営業として新たに挑戦するという話を聞きました。


 正直、驚きました。

なぜならフルコミ営業は、営業職の中でも最難関のステージだからです。営業未経験者がその世界に飛び込む勇気に、私は強く心を打たれました。

フルコミ営業は、一般的な正社員のように固定給があるわけではありません。結果が出なければ収入はゼロ。しかも「保険」という商材は、誰でも扱うことができ、同じ商品を販売している人が全国に無数にいます。つまり商品の差別化はできず、最終的には「自分自身を買ってもらう」しかない。営業として、そして一人の人間として、これほど厳しくも誇りある舞台はなかなかありません。

多くの人は、この話を聞いただけで怖気づくでしょう。

「安定を捨てるなんて無理」「自分には営業なんて向いていない」と考えるのが普通です。それでも一歩を踏み出した。これほど尊い挑戦はありません。

もちろん、挑戦した人にしか見えない景色がある一方で、途中で心折れてしまう人も多く見てきました。けれど、安定の中では人は本当の意味で成長できません。リスクを取る瞬間にこそ、進化は生まれるのです。

「自分を買ってもらう」ということ

フルコミ営業の世界では、「商品を売る」よりも「自分を買ってもらう」ことが何よりも重要です。
 

この“自分を買ってもらう力”は、まさにFPにも通じるものがあります。

保険営業もFP相談も、結局は「誰から聞くか」「誰に相談するか」がすべて。
 同じ提案でも、話し手が変われば印象も結果もまったく違う。
 

つまり私たちFPも、本質的には“フルコミッション営業”と同じ土俵に立っています。

自分を買ってもらうというのは、言い換えれば「自分の価値を信じてもらうこと」。
 そのために必要なのは、商品知識やテクニック以上に“人間力”です。
 

相手の心にどれだけ寄り添えるか、どれだけ信頼を築けるか。
 その土台の上にしか、契約も紹介も長期的な関係も成り立ちません。

最近「FPの差別化とは何か」と聞かれることが増えました。
 

私の答えは“自分を磨き続けること”こそが唯一の差別化戦略だということです。


 スキルを磨く、発信力を高める、経験を積む、仕事以外の趣味経験を積み楽しむ、人を研究し、人を好きになる。


 そうしたつみ重ねが、結果的に“自分というブランド”を育てていくのだと思います。

どんなにAIや情報発信ツールが進化しても、「人間を感じる温度」は代替できません。
 

人は、数字や理論ではなく最後は感情で動きます。

この感情の力は思った以上に巨大です。


 だからこそFPも、最後は“自分の言葉で人を動かせるか”に尽きます。

成功する人の共通点

挑戦する人を見ていると、成功する人に共通している要素がいくつか見えてきます。
 

私なりに整理すると、次の5つに集約されます。

① 自分より優秀な人と過ごしている


 環境は人を変えます。どんなに努力しても、周囲の基準が低ければ成長は頭打ちです。
 成功している人は、常に自分よりレベルの高い人の中に身を置こうとします。


 たとえ居心地が悪くても、むしろ自分よりすごい人が多くて居心地が悪い方がその環境にいるだけで自分が磨かれていきます。


 私も独立初期、業界の先輩方と過ごす時間を増やしたことで視座が一気に上がりました。
 「何をやるか」よりも「誰といるか」。これは本当に大事です。

② 夢や目標が明確にある


 ゴールが見えていなければ努力の方向は定まりません。
 成功している人は「なぜそれをやるのか」が明確です。
 

「収入を上げたい」ではなく、「1年後に月商100万円を達成したい。そのために今期は顧客対応力を磨く」と具体化されています。


 目標があるからブレずに動ける。行動が迷いなく積み重なります。

③ 続けるための仕組みを持っている
 意志だけで続けられる人はほとんどいません。
 成功する人は「仕組み」で自分を動かしています。
 

毎朝のルーティン、定期的な発信、記録の習慣。
 小さな行動を習慣化することで、モチベーションに頼らない体制を作る。
 

FPの仕事も同じで、面談・発信・学び・振り返りを“仕組み化”してこそ継続できます。

特に案件がないときほど、孤独になりがちでその時にルーティンを持っていると強いです。

④ 失敗しても秒で切り替える


 誰でも落ち込むことはありますが、成功する人は失敗を必ずプラス転換させます。


 「うまくいかなかったこと=データ」として淡々と受け止め、即座に行動を再開します。
 この“秒で切り替える力”こそ、継続の最大のコツです。

⑤ 圧倒的に量をこなす


 最後はやはり“量”です。
 

知識も信頼も経験も、すべては「やった量」に比例します。
 100回会えば100回の学びがある。10回しかやらなければ10回分しか進化しない。
 成果の差は才能ではなく行動量の差。
 圧倒的に動く人だけが、圧倒的な結果を手にします。

誰かの言葉ではないですが、本気で結果を出そうとしている最中であればワークライフバランスなんて言っている場合ではないですよね。

挑戦する人生を選ぶか

挑戦する人を目の当たりにすると、自分も背筋が伸びます。
 「自分もまだまだできるはずだ」と思わせてくれます。

年齢や経験を重ねるほど、人は“守り”に入りがちです。
 

失敗を恐れ、リスクを避け、挑戦を後回しにしてしまう。
 でも本来、挑戦こそが人生を前に進める燃料です。
 

どんなに小さな挑戦でも、それを重ねることで人は成長し、世界が広がっていきます。

FPとして独立した私たちも、結局は挑戦者です。
 

安定を捨て、自分の力でお客様と向き合い、自分の存在そのもので価値を提供している。
 それはまさに「フルコミ営業」と同じ精神です。

売上や集客という結果以上に、「挑戦し続ける姿勢」こそが一番の財産。
 もし今、壁にぶつかっている人がいたら、思い出してほしいです。


 行動しない後悔よりも、挑戦した後悔のほうがずっと清々しいということを。

年齢を重ねるほど、挑戦しなかった後悔は色濃く残ります。

大切なのでもう一度、言います。

やらなかった後悔は年を重ねるほど、大きくなります。


 怖くても、迷っても、一歩を踏み出すこと。
 

そして、もしあなたの周りで挑戦する人がいたら、心から応援してあげてください。

見返りなんて考えないでください。
 挑戦を支える側に立つこともまた、自分を高める大きな学びになるはずです。

昆知宏
新潟の住宅会社に営業として勤めた後、『特定の会社に属さずに、客観的な立場から住宅購入をサポートできるFPになりたい』という想いの元独立。住宅購入を専門とするFPとして、新潟でこれから家を買う方への相談を行っている。コンサルティングフィーは土地建物価格の1%と高額ながら、多くの顧客に支持されている。

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