愚痴がバズった話

昆知宏

知り合いの設計士の先生がSNSに投稿したものがバズってました。

内容はざっくりこんな感じです。


昨年の秋、設計依頼がありました。

多忙のため「時間をください」と伝えたのですが、
「どうしても11月末までに提案してほしい」と頼まれました。

断ろうかとも考えたのですが、断る勇気もなく、
頑張ってがんばって提案することにしました。

「敷地の資料をください」とお願いしたら、
「資料がない」とのことで、一時間かけて現地へ行き、
大雨の中2時間くらいかけて土地を測り周辺環境を入念に調査しました。

仕事が密になっていたので
1週間くらい、睡眠時間を削って案を練り上げました。

自分としては、「納得のできるプランが提案できた!」と思っていました。

ところが提案してから1か月以上連絡が無く
「どうなったかな」と気になっていました。

折を見て連絡したら、
「お世話になっております。現在他の建築会社との契約が進んでいる為、
申し訳ないのですがなしでお願いします。」とメールが来ました。

徒労感と脱力感から地面にのめり込んでしまいそうになりましたが、
「自分の糧にして今後に活かしたい」と気を取り直し、
「他社の良かった点を教えてください」とメールしたのが10日前
。。。まだ何の連絡もありません。

「初回提案は無料です」と伝えてあるので、
依頼者に求めることは何もありませんが、
せめてもう少し人間的な対応をしてもらえたら、
こんな思いを引きずることはないのかな、と。

さて、あなたはこれを見てどのように思いましたか?

共感者が多数

この設計士さんはただの愚痴です、と
ただ誰かに聞いてもらいたくて投稿しただけです。

しかしながら同業者の「いいね」「ひどいね」の共感の嵐を生み、
コメントも付きまくりバズってしまったのです。

建築業界ではこのようなことは日常茶飯事で、
頑張って提案したのに断りの電話もメールもないことはよくあります。

何かのついでに建築予定地を見に行くと、
他社の工事看板があがって工事が開始しているのです。

この時初めて、「負け」が確定します。
そもそも連絡が付かない時点で、99%こうなることは分かっています。

だけど頑張って提案したのですから、せめて他社にするにしても
どうしてそうしたのかくらいは教えてほしいものですよね。

ま、それはそれで置いておいて
この投稿のコメントはどんなコメントが多かったと思いますか?

前提として住宅業界ではこの設計士さんのように
初回プランと概算見積もりまでは無料で行うことが圧倒的に多いです。

なので私は特にコメントを付けませんでしたが
「ま、そんなこともあるけど!次頑張ろ!次!
飲みにでもいってスッキリしましょう」というのが本音です。

ところが皆さん真面目に回答をしていて、
最も多くのコメントが「無料相談をやめよう」ということでした。

初回提案から有料であれば今回のような悲劇は防げた、ぜひそうしたらいい!というものです。

果たしてこの対応はベストと言えるでしょうか?

あなたならどう考えますか?

一部の人のためにルールを変えることはどうなのか?

あくまでも個人的な意見なのですが、
私は特に何も変える必要はないと思いました。

ビジネスは順調にうまくいっているのに、
年に1回あるかどうかの出来事で
ルールそのもの変えてしまうのはリスクしかないからです。

つまりここで初回無料というのをやめて、
プラン提案から10万円、20万円取りますとなったらどうでしょうか。

よほどの先生のファンならまだしも
ほとんどの人は躊躇してしまうのではないかと思います。

もちろんそのためのブランディングを構築している路線も素晴らしいと思いますが、
この先生の場合は無料プラン提案でも
今までビジネスが何の問題もなく上手く回っているのです。

わずか一人のイレギュラーのために、今後同じ嫌な思いをしたくないから
ルールそのものを変えてしまおうというアドバイスはどうかなと思いました。

提案を有料にするにしても、
もっとポジティブな理由があって変革するならまだしも
ネガティブな出発点からの変更は好ましくはありません。

もちろんご本人も特に変えることはしないとは思うのですが、
あまりにもルール変更の声が優勢であったため、
一時の感情でのアドバイスになりやすいバズり投稿は
エンターテインメントや問題提起としては面白いですが
冷静に向き合う必要があると思ったのです。

本当に嫌なことが続けば変えればいい

今日の話はFP相談を無料でするか、有料でするかとは全く関係ありません。

あなたが決めたルールがどちらかで、
あなたがやりやすいようにした方がいいだけの話です。

明らかにどちらかのやり方が上手くいかない時は、
方法を変えることも視野に入れたらいいのではという程度です。

上手くいく、うまくいかない以前に、
ストレスを感じるかどうかというポイントも大事です。

年1回くらいであればさほどストレスにはならないと思いますが、
日常的に感じるストレスはルールを変えてでも
自分が思うように変えてしまってもいいと思います。

例えば私は、電話予約を
去年ホームページをリニューアルしたことを機にやめました。

電話をいきなりとってもスケジュール調整が難しいこと、
持ち物案内等の情報量が多くなりお互いにとってベストな連絡手段ではなく
私はとてもストレスを感じていたからです。

予約は電話じゃないといけないというのは
令和のこの時代はもう別にどうでもよくなっていて
ルールを変えた直後は正直不安でしたが、
今では全く問題なく運用できています。集客数も変わりません。

こういうルール変更は、まず自分が楽になり、
相談者さんも情報の整理がしやすいので改善とも呼べるレベルですね。

ちょっと話がそれましたが、
上手くいっていることを
一部の問題のある人の都合で変えない方がいいよということです。

そもそも設計士の先生も言っていたように、
そもそも無料相談だからそのまま逃げられてもルール上は問題ないですし、
ただ単に相手の配慮が欠けていただけでしょう。

そんな人とは逆に契約してからが大変なので、
そこで縁が切れて良かったじゃないですかと私ならそう声をかけます。

一時の感情だけで、上手くいってるシステムそのものを変更しないように気を付けてくださいね。

昆知宏
新潟の住宅会社に営業として勤めた後、『特定の会社に属さずに、客観的な立場から住宅購入をサポートできるFPになりたい』という想いの元独立。住宅購入を専門とするFPとして、新潟でこれから家を買う方への相談を行っている。コンサルティングフィーは土地建物価格の1%と高額ながら、多くの顧客に支持されている。

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