士業の世界は、結局のところセンスだと思う。
これを言ってしまっては、
元も子もないのですが、
司法書士や一級建築士の友人を
見ているといつもつくづく思います。
知識が豊富な先生ってよりも、
依頼しやすい雰囲気の人、
コミュニケーション能力が高い人、
が当然ですが選ばれる環境にあり、
私も好んでそういう人を紹介します。
あなたもきっとそうではないですか?
先日仕事上どうしても絡む必要の
あった司法書士の先生が、
上から目線で知識を振りかざし、
お客さんの”ポカーン”が明白で、
思わず横から口を挟んでしまいました。
「それ本来あなたの仕事でしょ。」
という言葉を押し殺し、
代わりに全部分かりやすい表現で、
順序立てて説明をしたのですが、
先生はムスッとしており、
もう二度とこの先生とは
仕事をしたくないと思いました。
実はこれ、
この先生がダメってわけではなく、
士業を行っている全員が
気を付けないとすぐに
陥ってしまうよくある失敗なのです。
知の呪縛
こういう士業のあるある現象には
以前から気づいていたのですが、
たまたま読んでいた本に、
的を得た言葉が載っていました。
それは”知の呪縛”という言葉です。
自分は知っていても、
他人は知らないということを
人は忘れてしまうのです。
つまり自分が知っていることは、
当たり前なので、
周りの人も知っていて当たり前という
錯覚になってしまうのですね。
これは金融関係の方にも傾向が強く、
例えばお客さんへ、
住宅ローンの説明を銀行員の方が
するときに
抵当権やら団体信用保険とか
短期プライムレートとか、
専門用語をとにかく乱れうちします。
言葉を掘り下げないで進めていくので、
お客さんは完全に”ポカーン”ですが、
流れ作業のように手続きは進んでいきます。
銀行の人が言っているのだから、
大丈夫だろうというバイアスの
凄さをいつも感じてしまいます。
知らなくて当たり前
FPのあなたに、
このようなことを気を付けましょう
というつもりはありません。
私たちFPは広く浅く知識を
持つことが強みですがら、
難しい事を分かりやすくお客さんに
伝えることは得意分野ですよね。
今日お伝えしたいことは、
”自分は知っていても、
他人は知らないということを
人は忘れてしまうのです。”
このことです。
さっきと一緒じゃん。
という感じですが、
視点を変えてみてください。
あなたは知っていて当たり前
だと思っていることも、
価値が埋まっている可能性が
かることを気付いてください。
目の前には価値が一杯
例えばローンのコンサルティングを
するときに金利の比較や諸費用の
比較をするとプロっぽいですよね。
たしかにこれには価値があるでしょう。
普通のお客さんが分かりにくい
ところだからです。
一方で住宅ローンの返済計画の
シミュレーションを作るのは
どうでしょうか。
例えば金利1%で3,000万円を
35年返済で借りたときに、
月々の返済がいくらになるかです。
こんなのネットで数字を入れて、
10秒で終わる作業ですよね。
確かにその通りです。
価値なんてありませんよね。
ありませんよね。
本当にそうですか・・・??
実は価値があります。
お客さんを改めて考えよう
お客さんはネットで試算できる
ことを知らないし、
入力方法も分かりません。
ウソではありません。
顧客の6割が実際そうです。
もう一歩進んで繰り上げ返済を
20年後に100万円すれば、
利息が50万円減りますよ。
なんてことも知りません。
ここまでいくと顧客の8割は、
自分でしようと思っていません。
私たちにとっては、
ただ計算すればいいだけで、
20秒で終わる作業です。
”自分は知っていても、
他人は知らないということを
人は忘れてしまうのです。”
あなたがFPの資格を取る前の
ことを思い出してください。
私はこんな簡単な計算ですが、
自分ではしようとも思っていませんでした。
つまりシミュレーションを
ほんの30秒で的確に教えてくれる人がいて、
複数の銀行での違いを言ってくれたら
「この人、凄い!」
と思っていたでしょう。
つまり価値を感じていたわけです。
あなたが、
自分には提供できる価値が少ないと
思っていて、
正当な報酬を得られずに困っている
としたら原点に立ち返ってみてください。
提供できる価値は無数にあるのです。
もしあなたが情報社会のこの時代、
提供できることが”少ない”と
思っているのであれば
それはあなたの思い違いです。
お客さんとの距離が開きすぎて
しまった結果です。