執筆者:昆 知宏
独立してFPをしていると、企業から業務提携の打診をいただくことがあります。
私もこれまで、住宅関連の会社を中心に、いくつかの提携のお話をいただいてきました。
全国展開している住宅関連会社からは、保険の契約をサポートし、そこから得られる収益を分配するという提案がありました。
地方を中心に展開している住宅関連会社からも、事業連携についてのお話をいただいたことがあります。
大手ハウスメーカーからは、一緒に成約に向けて力を貸してほしい、もちろんその対価もしっかりお支払いする、という提案もありました。
提携の形は企業によってさまざまです。どれも事業を広げるきっかけになり得るお話でしたが、当時の私はいずれもお受けしませんでした。
独立したばかりなら魅力的な話に見えるが
こうした提携のお話は、独立したばかりのFPにとって、とても魅力的なものだと思います。
自分だけでは接点を持てないお客様と出会える可能性がありますし、企業のネットワークや集客力を活用できることは、大きなメリットです。自分の事業を成長させるうえで、企業との連携は有効な選択肢の一つでしょう。
私自身も、独立当初でこういう話をいただき迷いましたし、もちろん相手の話もしっかり聞きました。
ただ、実際にお話を伺うなかで、提携の条件や仕事の進め方が、自分の理想とする事業の形とはかなり違うと感じることもありました。
一言でいうと、完全にお金が目的だったからです。
もちろん、企業には企業の事情があり、それぞれに合理的な提携の考え方があるのだと思います。
ただ、私自身が独立に求めていたものとは、少し方向性が違っていたのです。
独立した理由を大切にする
あなたが独立した理由、または独立したいと思う理由は何ですか?
私が独立した理由の一つは、自分の好きなように仕事をつくっていきたかったからです。
誰かが描いた事業計画に沿って仕事をするのではなく、自分で考え、自分の好きな分野を掘り下げ、自分なりのサービスをつくっていく。
そして、好きなことを続けた結果として収益が上がれば、それが理想的だと考えていました。
そのため、目の前の収益や事業拡大の可能性だけで判断するのではなく、自分が本当にやりたい仕事なのか、長く続けていきたいと思えるのかを大切にしてきました。
結果として、いただいた提携のお話はすべてお断りしました。その後もお声がけをいただくことがありましたが、自分の事業を優先してきました。
今振り返ると、当時はずいぶん思い切った判断をしていたなと思います。
ただ、自分の方向性を守ることも、独立したからこそできる選択だったのかもしれません。
何のためにFPをしているのか
もちろん、企業との提携によって事業を拡大することも、自分の専門性を生かして多くのお客様を支援することも、素晴らしい選択だと思います。
収益を伸ばすことを重視するのであれば、積極的に業務提携を進めることも一つの方法です。
自分一人では得られない機会や経験を得られることもあるでしょう。
一方で、やりがいや自己実現を大切にしているのであれば、必ずしも外部との連携を増やす必要はありません。
自分の興味や関心を深く掘り下げ、独自のサービスを育てていくことにも、独立ならではの面白さがあります。
私はこれまで、自分の好きな住宅分野を研究しながら、住宅購入を支援する独自のサービスをつくってきました。
もし早い段階で企業との提携を中心とした事業を選んでいたら、今とは違う仕事をしていたかもしれません。
あなたは、何のためにFPをしているでしょうか。
収益の拡大なのか、専門性の追求なのか、それとも自分らしい働き方や自己実現なのか。
大切なのは、外からの魅力的な話に触れたとき、自分が独立したときの思いに立ち返ってみることです。
独立とは、誰かと協力することも、あえて協力しないことも、自分で選べることに意味があるのだと思います。
自分が本当にやりたい仕事を、自分の意思で選んでいく。
それもまた、独立FPの醍醐味ではないでしょうか。