FPが知っておきたい“ギブ&ギブ”の真実

執筆者:昆 知宏
   

最近、久しぶりに自己啓発の本を何冊か手に取りました。

10冊くらいパラパラ読みしてページをめくっているうちに、改めて気づいたことがあります。結局のところ、多くの本の内容は「ギブ&ギブ」、そしてさらに「ギブ」に尽きるということです。

若い頃には頭で分かっていても、いざ実行に移すとなると難しかった記憶があります。そもそも専門知識に乏しく相手に与えられる価値が少なかったことや、自分の利益を確保したい気持ちが先に立ったり、「与える」ことの意味を十分に理解できなかったりして、なかなかスマートに実行できないものでした。

私自身、20代のころは「与える人になりたい」と思いながらも、心のどこかで見返りを求めていたと思います。しかし年齢を重ねてみると、このシンプルな真理がようやく腑に落ちました。

「ギブ」とは単に利益を渡すことではありません。相手のためになること、相手が喜ぶことすべてを指します。小さな気配りでも、情報でも、安心感でもいい。お金に換算できないものであっても、与える姿勢が循環を生み、結果として物事がスムーズに進んでいくのです。特にFP業務は、この「ギブ」の積み重ねが信頼の基盤をつくります。相談者が本当に欲しいのは“知識そのもの”ではなく、“安心”や“将来への見通し”だからです。

FP業務における「ギブ」の具体的な形

FPとしての実務を振り返っても、「ギブ&ギブ」の考え方は随所に活かすことができます。例えば、住宅ローンの相談に来たお客様に、単に金利比較の表を提示するだけでは不十分です。そこに「その人のライフプランに合わせた返済シミュレーション」や「将来のリスクに備える視点」を加えて提案することで、相談者にとっての大きな価値になります。これは知識を提供するのではなく、相談者の立場に立って「どうすればより安心できるか」を考え抜いた“ギブ”です。

また、FP同士の関係でも同じです。

業界の知識や経験をシェアしたり、困ったときにアドバイスを送り合う。これも立派なギブの循環です。与えることは、自分が持っているものを失うことではありません。むしろ「与えれば与えるほど、なぜか自分のところに返ってくる」ことを、多くの方が実感しているのではないでしょうか。信頼や紹介という形で返ってくる場合もありますし、長期的な顧客関係という形で返ってくる場合もあります。FP業務は目先の売上よりも「いかに相談者と長い信頼関係を築けるか」が重要です。そのための土台が「ギブ&ギブ」なのです。

お金のエネルギーとイメージの力

ここで関連して思い出すのが、作家でスピリチュアル系のマネーアドバイザーである本田健さんが講演で語られていた「お金のエネルギー」の話です。

お金にポジティブなイメージを持っている人と、ネガティブなイメージを持っている人では、行動も結果も大きく変わるというものです。セミナーでは参加者が「お金のイメージ」をチャットに書き込んでいました。

私自身は迷わず「感謝」と書きました。明確にポジティブです。

なぜなら、お金とは「誰かからの感謝の気持ちが形になったもの」だと考えているからです。お金を受け取るとき、「ありがとう」というエネルギーを受け取っていると思えば、自然と笑顔で受け取れるようになります。

印象的だったのは、このようなセミナーに参加しているのはきっとマネーEQが高い方々なので7割がポジティブなイメージを書き込んだ一方で、3割は「不安」「不足」「怖い」などネガティブなイメージを書いていたことです。

FP業務の現場では、一般の方に聞けばむしろ逆の割合になる可能性が濃厚かと思います。多くの人は「お金=不安の象徴」として捉えているのです。FPに相談に来る人が抱えている悩みの多くも、「お金そのもの」というより「お金にまつわる不安」なのではないでしょうか。

FPが果たすべき「お金のイメージ改革」

だからこそ、私たちFPができる大切な仕事のひとつは、相談者のお金のイメージを少しずつポジティブに変えていくことだと思います。

お金を「不足を突きつけてくる存在」ではなく、「ありがとうの対価」「人生を豊かにする道具」として捉えられるようにサポートするのです。そのためには、単なる数字の計算だけではなく、相談者の価値観や大切にしたい暮らし方を丁寧に聞き出し、「その夢をお金の力でどう実現できるか」を一緒に描いてあげる必要があります。

最終的にFP業務は「ライフプラン=人生設計」に帰着します。ライフプランを共有しながら、そこに数字や制度を織り込むことで「お金=不安の種」から「お金=感謝の循環」へと変えていくことができるのです。これこそ、FPにしかできない本質的なサポートだと考えます。

ギブ&ギブの精神で知識や安心を提供し、相談者の心の中にある「お金のイメージ」を少しずつ変えていく。これが積み重なっていくと、自分自身にも豊かさが返ってくる。結局、人生でも仕事でも、最も大切なのは「与える」ことの連続です。そして、その循環の中心に「感謝」というエネルギーが流れているのです。

PS

一点、注意すべきところは今日のような記事は心で思っているのはいいのですが、相談者に直接、循環エネルギーの話をすると、「あ、この人スピ系だ」と思われる可能性があります。

関係が薄い人にいきなりスピ系の話から入らないように気を付けた方が良いのではないかと私個人的には思います。そんなことみなさん言われずとも分かっていますよね 笑

昆知宏
新潟の住宅会社に営業として勤めた後、『特定の会社に属さずに、客観的な立場から住宅購入をサポートできるFPになりたい』という想いの元独立。住宅購入を専門とするFPとして、新潟でこれから家を買う方への相談を行っている。コンサルティングフィーは土地建物価格の1%と高額ながら、多くの顧客に支持されている。

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