執筆者:昆 知宏
例えば最近増えているのが、価格をあらかじめ3〜5%ほど高めに見積もって提出するケース。
さらに、中東情勢などを理由に「契約後にさらに価格が上がった場合は施主負担になる可能性があります」という説明も増えてきました。
GW明けあたりから、住宅業界の空気が一気に変わってきました。
以前から懸念されていた建材不足や価格高騰が、いよいよ現場レベルで顕在化してきています。
また、工事終了後に「利益が足りなかったので協力してほしい」という、いわゆる“泣きの請求”のような話も耳にするようになっています。
7月以降引き渡し予定の物件では、建材の納期が不透明なものも増えてきました。
断熱材が入ってこない。代替品に注文が殺到する。その代替品も品薄になる。基礎工事に必要な材料が届かず、工事序盤で止まる。
そんな話が、かなり現実味を帯びてきています。
工務店側もかなり苦しい
住宅業界は基本的に、工事を完成させないとお客様から代金を回収できません。
つまり、工期遅延は施主以上に工務店側へ致命傷になります。
例えば、ほとんど完成しているのにお風呂だけ入らない。
細かい部材が届かず工事が止まる。
こうなると、現場はかなり苦しくなります。
そのたびに施主へ細かく確認を取っていたら工事が終わらない。
お金も入ってこない。
そうした背景から、今後は「やむを得ない仕様変更」「代替品への変更」が増えていく可能性があります。
もちろん本来は丁寧な説明が必要ですが、現場が混乱してくると、どうしても対応が荒くなる会社も出てきます。
業界全体が少しずつ不穏な空気になってきている印象があります。
金利上昇がさらに追い打ち
そこへ追い打ちをかけているのが金利です。
固定金利は急上昇。
変動金利も今後じわじわ上がっていく可能性があります。
その結果、地方でも普通に土地と建物を購入すると、月々15〜20万円返済が当たり前の水準になってきました。
しかし、それを40年以上のローンで月額を抑えて販売する流れも増えています。
販売側も相当に苦しい。
ですが、本当に大変なのは返済していく個人のほうです。
実際、独立FPとして相談を受けていると、「この計画はさすがに無理があるのでは…」と思うケースがかなり増えてきました。
今こそFPの本質が問われる
もちろん、「今が最安値です」「今がチャンスです」と言えば、お客様の購入意欲は高まります。
その流れに乗れば、住宅会社も動きやすいですし、FP側も収益には繋がりやすいでしょう。
ですが、今回ばかりは私はそう簡単には言えません。
むしろ、「一度立ち止まったほうがいい」「計画を見直したほうがいい」と感じるケースのほうが増えています。
住宅FPは、住宅を買わせるために存在しているわけではありません。
家を買った後も、人生が続いていくことを守る役割だと思っています。
これから業界はさらに難しい局面に入っていくと思います。
だからこそ独立系FPは、収益率が落ちたとしても、正直に提案する使命を忘れてはいけない。
今こそ、本当に顧客を守る時なのかもしれません。