期待に応えらない質問あるある

執筆者:昆 知宏
  

住宅ローンの相談にのっていると、答えに困るよくある質問があります。

それは「住宅ローンは金利が低いからめいっぱい借りるだけかりて、現金を手元に残して運用しようと思っているのですがどう思いますか?」という話。

とはいえ、住宅購入検討者は若い方か結婚したての方が多いため、手元の現金はそうはいっても300~500万円くらいの方が多いです。

そしてこの手の質問をされる方の多くは、投資経験があまりありません。
S&P500の意味すら怪しいという感じです。

私自身は住宅ローンの額を増やして投資をするのは、個人的にはしたくありません。
最低でも住宅ローンの1割は頭金を出して、手元にまとまったお金がないならそれからコツコツ積立投資をやっていきます。

あなたはどう思いますか?

リスクはとりたくないけどリターンが欲しい

ここ数年だけ切り取って事実を見れば、住宅ローンを目いっぱい借りて、手元に残った現金をS&P500などで運用すれば確かに利益が出たことになります。
ここ数年は本当に特別でしたよね。

もちろん今後も同じように再現できるかもしれないし、できないかもしれない。
こればかりは何とも言えませんよね。

長く株式市場に滞在していると、ここ数年は明らかに異常なのでこのペースで今後も続くなんてほぼ不可能だろうと経験者の方は思うのではないでしょうか。

質問で困るのは、そこまで望まないのでローリスク・ローリターンでいいのはありませんか?

というものなのですが、さすがにその手のものはほとんどありませんよね。

投資経験がない方のローリスクというのは、原本を割らないという意味のことが多いので思いつくのはネット銀行の定期預金や、円建ての終身保険などでしょうか。

でもこういう話をすると、そういうのじゃなく…となってしまいリターンを5%くらい望んでいる印象があります。(近年の株式市場がバグってるだけで、5%は全然ローリターンじゃないです。)

多くの方はリスクを過小評価とリターンを過大評価しがちです。

借金をして投資をすることは嫌いなはずなのに

株の信用取引は、借金をして株を取引する行為ですよね。

でも株の信用取引の説明をすると、多くの人はしたくないと思うはずだし、初心者の方は私もしない方がいいと思います。

でも住宅ローンのことになると、借金を増やしてでも投資に回した方がいいのではないかと思う方が圧倒的に増えます。

リスクを抑えるために債券多めの投資信託を買ったとしても、為替の影響で大きく評価額が前後する可能性が今後は高く、とてもじゃないけど初心者の方がローリスク・ローリターンと思っている内容とは違うと思うのです。

そのため、私的には肯定も否定もしないのですが借金をしてまで(住宅ローンを増やしてまで)投資をすることについて、どう思うのかを問うようにしています。

少なくともFPに「何を買ったらいいですか?」と答えを求める人は、こういうことはしないほうがいいのではと直感的に感じます。

投資は余裕資金というアドバイスはつまらない

投資の原点はあくまでも余裕資金。

余裕がある資金、極端な話あってもなくても大丈夫なお金。
それだからふり幅があっても別に冷静でいられるわけだし、リスクを承知で買ったというマインドセットがあれば常に冷静でいられるはずです。

しかし余裕資金でないお金は、何か大きな下落があるととてもじゃないけど冷静ではいられないはずです。

下落時に心がざわざわしてしまうようであれば、そのお金は余裕資金ではなかったと考えることもできます。

新NISAが出る前の世界は、投資は余裕資金でという認識が強かったように思うのですが、今年は円安・株高・NISAブームでちょっとおかしいことになっていますよね。
市場から取り残されるリスクをみなさん気にしすぎて悪手になってしまっている感じがあります。

でもこういうまともな意見って相談者にも喜ばれないし、お金にもなりません。

「ローリスクなのにこれだけのリターンがでます!FPだから知ってます!」みたいのを期待しているのでしょうけれど、そういうのがまさに詐欺ですもんね。

ちょっとなんだかなあと思うところがあり、みなさんはどんなふうにこの手の相談を切り返しているのかとても気になりました。

昆知宏
新潟の住宅会社に営業として勤めた後、『特定の会社に属さずに、客観的な立場から住宅購入をサポートできるFPになりたい』という想いの元独立。住宅購入を専門とするFPとして、新潟でこれから家を買う方への相談を行っている。コンサルティングフィーは土地建物価格の1%と高額ながら、多くの顧客に支持されている。

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