ヤバい市長

昆知宏

先日新潟県の見附市という
人口5万人都市のプレゼンを
受けてきました。

どういう内容かというと、

市の命運をかけた大規模宅地の
業者向けの分譲説明会です。

全74区画の分譲した土地を、

「ぜひ皆さん奮って購入し、販売してください!」

というものでした。

正直この市のことは、
同じ県民の私も良く知らず、

中途半端なイメージしか
ありませんでした。

価格設定もかなり強気で、

「ここで宅地分譲しても
需要ないんじゃないの?」

と半信半疑で行ってみたのですが、
見事にそれを覆されました。

なんでも市長は以前に大手商社の
相当なやり手だったそうで、

その手腕を生かしてふるさとである
この知名度の薄い市を本気で変えようと
思っていることが実感できました。

メリットの羅列

市長は、この分譲地の魅力を語ります。

・全区画が角地です。

・最低敷地面積60坪以上あります。

・角地のため2方向は空き地になり、
坪数以上の広さを実感できます。

郊外だけあってゆったり暮らせていいよね。
と私は思いました。

全区画角地とは大胆だなあという感想です。

更に、市長は続けます。

・スーパー、温浴施設や市役所などを回る
コミュニティバスが100円で20分に一本来ます。

・高齢化しても街を気軽に移動できます。

地方感覚でいくと20分に1本は、衝撃です。
これはすごいなあと思います。

力が入ってきた市長はまだ続けます。

・完全に無電線化された街で景観が美しいです。

・分譲地の52%道路や公園、
遊歩道などの余白地になります。
家でぎゅうぎゅうせずに
気持ちよい空間が広がります。

・夜はおしゃれな照明で街全体を優しくライトアップ。

イメージカットをスライドで、
見せられて私は呆気にとられます。

なんて贅沢な土地の使い方なんだと・・・

この分譲地内だけ別な空間に
なりそうだな。

後で聞いた話だと市長さんは、
田園調布にお住まいだった?!とか。
なるほどね。という感じです。

そして、住宅に思い入れがあるようで

・健康に暮らせないローコスト住宅に建築は認めません。

と、20年でガタが来る低性能の家は
認めないと大胆な提案。

これを有言実行する市長さんすごいなあ
と思いました。

もう半数は買いたくなってきているぞ

私はFPなのでこの土地を買うわけ
には行きませんが、

今回ご一緒した住宅会社の役員の方は、
もう買う気マンマンです。

これだけ好条件なら、
仕入れて絶対売れる!と思ったからですね。

ここで、すかさず市長さん、続けます。

「行政が企画した土地ですので、
これだけ贅沢に土地を使っても

利益を出さなくていいので、
割安なお値段でご提供できます。

民間業者が同じような条件で
この土地を販売した場合、
倍以上の価格になるでしょう。

行政としては市に若い世帯の
高所得者の人口が増えてくれれば
大成功なのです。

そして行政としても、
今度このコンセプトで土地を
販売することは、
二度とありません!

そして分譲地の周りには、
大企業の工場誘致が既に

決定しており数百人の
雇用者が生まれます。

(彼らは大企業のため、賃金ベースも高そう。
つまり買い手も準備してくれている)

私の想いの詰まったこの分譲地を
ぜひご検討ください!!
よろしくお願いいたします!!」

ダメ押しクロージング

市長から担当者が変わり、まだまだ続くクロージング。

ここでリーサルウェポンの登場です。

「今回申し込みをご決断いただいた方には
土地の金額を5%値引きします。

なおかつ、最大100万円の工事
補助金を市から支給します。
国の補助金と併用もできます。」

さあ、どうぞお申込みください。
よろしくお願いいたします!

・・・勝負あり!・・・

ですね。

これだけ魅力的なオファーを出されれば、
もう完売は見えたでしょう。

正直私は行政の説明会なので、
棒読みで形式的な感じかと
思っていたのですが、

ここまで作り込まれていたことに
驚きました。

「この人を市長にした、市民すごい」

と思ったくらいです。

まとめです。

あなたが何かを買ってもらいたいと
思った時には、

・メリット連発
・希少性
・早期割引

この3つを意識するだけで、
結果は格段に変わるのです。

昆知宏
新潟の住宅会社に営業として勤めた後、『特定の会社に属さずに、客観的な立場から住宅購入をサポートできるFPになりたい』という想いの元独立。住宅購入を専門とするFPとして、新潟でこれから家を買う方への相談を行っている。コンサルティングフィーは土地建物価格の1%と高額ながら、多くの顧客に支持されている。

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