FPは人生デザイン業である

執筆者:昆 知宏
   

最近、お金の「貯め方」よりも「使い方」について、顧客と深く話す機会が増えてきました。

たとえば、私は自宅をリフォームして長年の夢であった大型壁掛けテレビを設置しました。

15年間32型のテレビを使っていましたが、「いつか」と温めていたことをついに実行し、一気に生活が豊かになりました。家族でスイッチ2をしたり、大型画面で好きな映像を見たりできて、思った以上の満足感がありました。小さなことのようですが、この満足感は「お金を使ってよかった」と心から思える経験です。

私には憧れがまだあります。ひとつは、「ななつ星in九州」の3泊4日旅行です。2人で約250万円かかるこの豪華列車の旅は、まだ実現できていませんが、子どもが大学生になったくらいの人生の節目で思い切って叶えたいと思っています。

そして、キャンピングカー。以前の記事にも書きましたが、こちらも「近い未来に」と意識してリストに入れています。

このように、やりたいことを明確にして、それに向けてお金を使う準備をすること自体が、実は幸福感の源泉になっているのです。

「使わないお金」は価値を失っていく

私たちFPは、どうしても「将来に備える」視点が強くなりがちです。もちろんそれは大切ですが、「いつか使うつもりのお金」は、インフレや気持ちの変化によって、価値を失ってしまうリスクをはらんでいます。

実際、「老後のために」とずっと貯め続けているうちに、いざ老後になった時には気力も体力もなく、結局やりたいことができなかったという話も少なくありません。私はまだ老後になっていないので正確には分かりませんが、そうだと決め打ちして若い時期を過ごすと決めて生きてきました。

重要なのは、「お金をどのタイミングで使うか」。

欲しいもの、したいことをリスト化し、優先順位をつけて、一つずつ叶えていく。

このプロセスが、自分の人生を「ちゃんと生きている」と実感させてくれるのです。

私の顧客の中にも、これまで温めていた目標をようやく実行し、輝くような表情をされている方が何人もいます。ライフプランを作っているので、それをこのタイミングで実行しても問題がないのかが的確にアドバイスが可能だからです。

FPとして、こうした「お金を使う後押し」ができることは、とても大きな価値です。貯めるサポートだけでなく、「今、何のために使うべきか」を一緒に考えることこそ、これからのFPに求められる役割ではないでしょうか。

幸福の設計図にこそ、FPが必要とされる

私自身、2年ほど前からメルマガで「お金をどう使うかのアドバイスができるFPこそ、これからの時代に求められる」と繰り返し発信してきました。それは今、まさに現実のものになってきていると感じます。

老後資金の積立、教育費の備え、住宅ローンの見直し。どれも大事な仕事ですが、FPとして「その先の人生をどう生きたいか」に寄り添い、価値ある支出を提案できることが、最大の差別化ポイントになります。

皆さんが思っている以上に、世の中、お金を使うことが苦手の人が本当に多いのです。

FPという職業は、お金の専門家というより、「人生の選択肢を広げるナビゲーター」であるべきだと思うのです。

アドバイスの“単価”を上げる覚悟を

「お金の使い方」へのアドバイスには、あなたが思っている以上の価値があるということです。なぜなら、すべての人は「幸せになりたい」と思って努力しています。それにもかかわらず、そのためのタイミングやお金の使い方を知らず、迷い、後回しにしてしまっている人がとても多いのです。

私の経験上、紐解いていくと実は既に幸せである人が多いのです。世の中のノイズによって、不幸せと思わされている人がどんなに多いことか。常識やSNSがどんなに恐ろしいことか。

そんな人に対して、「これ、今やるタイミングですよ」「今が、やりたいことにお金を使う時です」と背中を押してあげるだけで、その人の人生が大きく変わる。そういうサポートに価値があります。

FPは、これからもっと「人生デザイン業」へと進化していくべき職業です。

その一歩として、あなた自身も「お金の使い方」に目を向けてみてはいかがでしょうか。

それは顧客の人生だけでなく、あなた自身の人生を豊かにする第一歩になるはずです。

昆知宏
新潟の住宅会社に営業として勤めた後、『特定の会社に属さずに、客観的な立場から住宅購入をサポートできるFPになりたい』という想いの元独立。住宅購入を専門とするFPとして、新潟でこれから家を買う方への相談を行っている。コンサルティングフィーは土地建物価格の1%と高額ながら、多くの顧客に支持されている。

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