つくばの自宅より
執筆者:石塚駿平
ふと思い出したのですが、
『どっちの料理ショー』
というテレビ番組が昔ありましたよね。
2つのチームが、おいしい料理のプレゼンをして投票を行い、多数決で勝った方のチームに投票した人はその料理を食べられるという番組です。
その当時はただ、面白いなーと思いながら見ていたのですが、今思い返すとマーケティングとして非常に大きな学びがあるということに気づきました。
あの番組、もしただの料理番組で、シェフが美味しそうな料理を作るだけだったらそんんなに盛り上がらないと思うんですよね。
でも、番組は非常に人気でゴールデン枠で9年半も続いていました。
その秘訣は何だったかというと・・・
人気番組の秘訣
食材の深堀りが面白かった、ということが一番に挙げられると思います。
ただ料理をするのではなく、食材にこだわり
・滅多に取れない幻の魚を求めて厳しい漁に出て、やっとの思いで手に入れる
・一流の農家がただならぬこだわりを持って栽培した野菜を使う
・市場に出回らない幻と言われる希少な部位の肉を使う
などなど、料理を構成する要素を深堀りをし、ドラマ仕立てにすることでエンタメ性を出しながら食欲を刺激する。
そんな演出があったからこそ、料理が美味しそうに見え、視聴者を引き付ける番組になったのでしょう。
もし、食材紹介なしで料理が出てきたら・・・
もし、食材の紹介が全くなかったとしたら、プレゼンされる料理を
『美味しそう』
と思う人の割合はどうなるでしょうか?
間違いなく、少なくなるはずです。
ということはつまり、提供される料理が全く同じだったとしても、食材の紹介をした方が美味しそうと思う人の割合が多くなるということです。
・その食材の裏にはどんなストーリーがあって
・どれくらいの希少価値があって
・どれくらい評価されており、どんな味なのか
ということをしっかりと事前の情報として伝えられると、その料理に対する印象が大きく変わるということですね。
そして実際に、食べたときの満足感も変わるのでしょう。
この事例が示すマーケティングの学び
この事実は、マーケティングを考える上で大きな学びを提供してくれます。
『提供するものは同じでも、事前に与える情報によって得られる価値が変わる』
ということを示しているからです。
マーケティングの視点をもって世の中を見てみると、十分な情報を提供できていないがゆえに、十分な価値を伝えられていない例がたくさんあります。
美術館に行って、絵をただ見るよりも、作者の生い立ちや人生、作品を生み出すまでの苦悩やストーリーがわかっていれば、よりその作品を楽しめるでしょう。
(僕は美術館はそこまで楽しめるタイプではないのですが、こういった情報が事前にあれば楽しめるかもしれません・・・)
観光名所に行っても、ただそれを見るのではなく背景にある歴史を詳しく教えてくれれば、より感慨深い経験になるはずです。
飲食店では食材の紹介はあまりされませんが、どっちの料理ショーのように食材の紹介があれば、もっとおいしいと感じるかもしれません。
FPの仕事にもそのままあてはまる
そして、これはFPの仕事にもあてはまります。
例えば、ライフプランを作ることを考えてみましょう。
ただライフプランを作るだけというのは、なんの説明もなく料理をテーブルに置くのと同じです。
それをやってしまうと、顧客が感じる価値というのは高くありません。
それに、ただ作るだけなら顧客自身がやろうと思えばできますしね。
そうではなくて、
・なぜそのライフプランを作るのか?
・作ることで人生にどのような意味があるのか?
・それを活かすことで、これからの人生にどんな良いことがあるのか?
ということをしっかり説明をすることができたら、顧客が感じる価値というのは大きく変わるはずです。
表層的な数字の分析で終わるのではなく、どこまで深堀りができるのか。
伝える言葉を選び、どこまで深い意味を与えることができるのか。
これは、ライフプラン作成だけではなく資産運用や住宅のアドバイスでも同様です。
この部分が、FPとしての実力を左右すると言っても過言ではありません。
『提供するものは同じでも、事前に与える情報によって得られる価値が変わる』
ということを、ぜひ意識してみてください。
それができると、顧客満足度も大きく上がりますし、受け取れるフィーも増えていくはずです。