執筆者:昆 知宏
FPとして独立した当初、私の中での仕事のイメージは明確に「コンサルティング」でした。
相談者が支払うフィー以上の金銭的メリットを提供すること。
・保険料の削減
・住宅ローンの見直し
・コストの圧縮
「この相談で〇十万円、〇百万円得をしました」と言ってもらえることが価値であり、それこそがFPの存在意義だと考えていました。
いかにロジカルに、効率よく、数字で成果を示すか。
相談者にとって“費用対効果の高い専門家”であることが最優先でしたし、それは今でもFPの重要な役割の一つだと思っています。
ただ、長くこの仕事を続ける中で、少しずつ違和感のようなものも芽生えてきました。
数字上は大きな改善が出ているのに、相談者の表情が晴れない。
提案内容は正しいはずなのに、どこか腑に落ちていない様子が伝わってくる。
そんな場面に何度も遭遇するようになったのです。
数字では解決しない不安に向き合う、カウンセリングという視点
そこで意識するようになったのが、「カウンセリング」という視点です。
カウンセリングとは、答えを与えることではなく、相手の不安や迷いに寄り添い、一緒に整理していくプロセスだと感じています。
実際の相談では、「いくら得するか」よりも、「この選択で本当に大丈夫なのか」「将来、後悔しないだろうか」という感情面の不安が大きな比重を占めています。
家を買っていいのか、今仕事を変えても問題ないのか、子どもの教育費は足りるのか。
これらは計算式だけでは解決しません。
数字で裏付けを取りつつも、その人の価値観、人生観、家族への思いを丁寧に聞き取る必要があります。
結果として保険料が下がったり、無駄な支出が減ったりすることはありますが、それは「安心して前に進める状態」を作った結果にすぎません。
最近は、こちらが何かを“してあげた”というより、「話を聞いてもらえて気持ちが軽くなりました」と言われることのほうが、印象に残るようになりました。
正解を出す仕事から、伴走する仕事へ
不思議なことに、こうした関わり方にシフトしてからのほうが、仕事から得られる満足度や幸福感は明らかに高くなっています。
以前は「もっと成果を出さなければ」「もっと分かりやすく説明しなければ」と、相談料を金銭的な価値として返すことにどこか常に力が入っていました。
しかしカウンセリング的な関わりを意識するようになると、相談の場が少し柔らかくなり、自分自身も無理をしなくなりました。
同時に、フィーを払うから、絶対にそれ以上の価値を具体的に返してほしいという度合いが強い顧客を見抜けるようになり、少し距離をとれるようになりました。
FPがすべての正解を持っている必要はありません。
一緒に考え、一緒に悩み、納得できる選択肢を探す。
そのプロセス自体に価値があると感じるようになったのです。
結果として、相談者との関係は長く続きやすくなり、数年後に「また相談したくて」と連絡をもらうことも増えました。
短期的な成果よりも、長期的な信頼関係。
これもFPという仕事の大きな魅力だと思います。
FPとして、あなたはどこに立ちますか?
FPの関わり方は一つではありません。
コンサルティング型で鋭く成果を出すFPもいれば、カウンセリング型でじっくり寄り添うFPもいる。
どちらが正しい、優れているという話ではなく、「自分はどのスタンスでこの仕事をしたいのか」を自覚しているかどうかが大切なのだと思います。
正直私も若いときは、コンサル型でガンガン行く方が実際に合っていたと思います。
今の自分は、どちらに軸足を置いているのか。
相談者にとって、どんな存在でありたいのか。
この問いを持ち続けること自体が、FPとしての成長につながるのではないでしょうか。
さて、あなたはFPとして、どんな関わり方を選びますか?