執筆者:昆 知宏
あなたは将来の夢や目標がありますか?
私は「目標」というよりも、人生で経験してみたいことのひとつに、キャンピングカーを所有することがあります。
著書『DIE WITH ZERO』(※老後にお金を先送りする人生ではなく、若いときに有意義に使おうと啓発する本)のように、「いつかやりたいこと」を先送りにしていると、気がついたときには年齢を重ね、当時やりたいと思っていたことを実行する気力や体力がなくなっている——そんな話をよく耳にします。
先輩方には怒られるかもしれませんが、私自身も30代後半から気力や体力の低下を感じるようになり、最初はそれが本当にショックでした。でも、今では少しずつ慣れてきました。
感覚的には、これから一気にではなく徐々に気力・体力が低下していくような気がしています。そう考えると、「いつか」やりたいことはなるべく早めに実現したい、と思うようになりました。
そこで、昔からの小さな夢だったキャンピングカーを最近、真剣に物色し始めました。狙っているのは、トラックベースのキャブコンという大型モデルです。やはり、大型車を運転するなら、少しでも若いうちのほうがいいなと感じています。
キャンピングカー市場の現実
これまでは、展示会で実車を見て回る程度の「冷やかし」でした。
キャンピングカー市場では、私のような年齢層は若手にあたるため、どこのブースでもほとんど相手にされません(笑)。販売スタッフの方々もプロですから、「買いそうな人」と「買わなそうな人」は一目で分かるのでしょう。
実際、購入者の多くはシニア層です。退職を機に「日本一周」を計画し、退職金で大型キャンピングカーを購入するというのが王道パターンのようです。
とはいえ、キャンピングカーは基本的に1,000万円以上する大きな買い物。何がどう違うのかも分からず、気軽に購入できるものではありません。
調べていくうちに、ベース車両の種類、電装関係の装備品、サイズ感などに明確な違いがあることが分かってきました。
たとえば、ラグジュアリーなモデルは室内も広くて憧れますが、サイズが大きすぎると駐車の制限がネックになります。よくあるモデルで「全幅2100mm・全長5200mm・高さ3000mm」ほど。もはや“動く家”ですが、コインパーキングにはまず停められませんし、スーパーの駐車場でも枠からはみ出てしまいます。家の車庫証明が取れず、そもそも置けないという方も多いはずです。
そのため、最近ではコンパクトサイズのモデルが人気になっているようです。私もその方向で再検討しています。
実はコストもそこまで高くない?
購入を現実的に考えはじめたのは、金銭面での意外な発見もきっかけです。
キャンピングカーは高額ですが、リセールバリューが非常に高いのです。なぜかというと、新車の納期が1年以上かかることが多く、すぐに欲しい人が中古車市場に流れるためです。
実際、中古車市場では3年落ちで新車価格の90%、5年落ちでも80%ほどの価格で取引されています。
たとえば、以下のような試算になります。
【1,200万円の新車購入】
5年後の買取価格:720万円(60%想定)
差し引きの実質所有コスト(維持費など除く)
480万円/5年
= 96万円/年
= 約8万円/月
こうして見ると、安くはないものの「全く手が届かない」というほどでもありません。
FP的には問題発言かもしれませんが、5年間NISAやiDeCoを減らせば十分に現実的です(笑)。
これぞまさに『DIE WITH ZERO』的な考え方かもしれません。
法人所有という選択肢もあります。たとえば、モバイルオフィスやキャンピングカーレンタル事業など、アプリを使って簡単に副業的に活用する方法も可能です。減価償却などの節税効果も見込めます。
私はそうした事業化の面倒さを考えて、法人所有は検討していませんが、もしやるなら+αの付加価値をどう設計するかという点は、マーケティングのトレーニングにもなりそうです。
体験しないと分からない世界=人生経験の豊富さ
「キャンピングカーのある人生」って、実際どうなんでしょうか。
一番の興味はここにあります。
買ってみたら、取り回しが悪すぎて全然使わずすぐに手放すかもしれません。
でも逆に、とても便利で“相棒”のような存在になり、人生が大きく変わる可能性もあります。こういったことは、体験してみないと絶対に分からないのです。
1回や2回、レンタカーで借りた程度では分からない世界です。
仮に「思っていたのと違った…」となっても、早期に売却すれば金銭的な損失はほとんど出ません。
一方で、本当に人生を変えるような体験になるなら、これはまさに『DIE WITH ZERO』の教えを実践したことになります。
というわけで、私はキャンピングカーを買う“かも”しれません。(まだ少しビビってます)
そんなことを考えて、気づけばもう1年以上が経過しました。
でもこういうところを思い切れるかどうかが、人生を楽しむ秘訣なのかもしれません。
FPとしてアドバイスの幅を広げるためにも、実際に自分自身で「振り切った体験」をしてみたいと思っています。
P.S.
私がサラリーマン時代、最後に勤めていた会社の社長が、まさにそういう生き方をしている人でした。
『DIE WITH ZERO』という本も、その社長から「これ、読んでみて」と発売直後に教えてもらいました。
当時、社長が言っていた言葉が、今でも心に残っています。
「やりたいことや目標があるなら、どんどんやっていったらいいよ。
物なら買えばいいし、体験なら実行するだけ。
そうしないと、目標が詰まってしまって“それなりの人”にしかなれない。
成長も止まってしまうし、意欲だって湧かなくなるよ。
でも、それを繰り返していけば、きっと人生も仕事も前に進んでいくんじゃないかな。」
この言葉を今、しみじみと思い出しています。