執筆者:昆 知宏
「なんか、ごめんね。」
先日、家族で夕食を食べていたとき、テレビのニュースで、経済的な理由から子どもは1人にしようと考える人が増えている、という話題が流れていました。
2人目を望んでいても、家計のことを考えると難しい。
そんなふうに考える家庭が倍増しているという内容でした。
すると、隣にいた次男がボソッと「なんか、ごめんね」と口にしたのです。
いやいや、うちは全然そんなことないから大丈夫だよ!
そんなやり取りをしたのですが、後から考えると、少し胸に引っかかるものがありました。
実は最近、FPとしてライフプランを作っていると、子どもが1人の場合と2人の場合で、将来の生活のゆとりにかなり差が出るという現実を目の当たりにすることが増えています。
もちろん、家庭によって収入も支出も違いますし、子どもが何人いれば幸せという話でもありません。
ただ、現場で家計を見ていると、経済的な理由で子どもの人数を考えざるを得ない家庭が急増していることを実感するのです。
子ども2人だと、急に厳しくなる
住宅を購入して、車を持ち、子どもにはできるだけ教育の選択肢を与えてあげたい。
老後のためのお金も準備しておきたい。
どれも、特別に贅沢な希望ではないと思います。
ところが、これらをすべて実現しようとすると、子どもが2人いる家庭では、それなりの世帯年収が必要になります。
相談の中で、ご夫婦は2人目も欲しいと考えている。
でも、ライフプランを作ってみると、将来の貯蓄がなかなか増えない。住宅予算を抑えたり、支出を見直したりしても、余裕があるとは言いにくい。
そんなとき、「子どもが1人だったら、どうなりますか?」と聞かれることがあります。
そして、子どもを1人にして試算すると、なんとかやっていけそうな計画に着地する。最近、こうしたケースが本当に多いのです。
いつもこの瞬間に、私はFPという仕事がいやになります。
家計の数字を見れば、どちらが経済的に余裕を持てるかはわかります。だからといって、本当は2人目が欲しいご夫婦に「1人なら大丈夫そうですね」と伝えることが、正解なのでしょうか。
結婚して子どもを考えるご夫婦と話していると、私の肌感覚では、1人だけでなく2人以上の子どもを望んでいる方も少なくありません。
それなのに、お金のことを考えると、希望どおりにはいかない。
この現実が、いつも残念でなりません。
2人目を望める社会になってほしい
日本では少子化への対応が大きな課題になっています。子どもの数を維持し、将来の社会を支えていくためにも、子育て世帯への支援は重要です。
それなのに、現場でライフプランを作っていると、子どもを望んでいないわけではないのに、住宅費や教育費、日々の生活費など、いろいろな条件がかみ合わず、2人目を諦める方向に気持ちが傾いてしまうご夫婦がいます。
もちろん、子どもを何人持つかは、それぞれの夫婦が決めることです。
経済的な理由だけでなく、仕事や健康、育児の負担など、さまざまな事情があります。
子どもが1人の家庭や、子どもを持たない選択を否定するつもりもありません。
ただ、本当はもう1人欲しいと思っている人が、お金の心配によってその希望を諦めてしまうのなら、社会としてできることがあるのではないでしょうか。
私は、子育て支援のお金の使い方について、現場の感覚と政策の方向性が、必ずしもかみ合っていないように感じることがあります。
FPにできることは何だろう
私は、住宅購入の予算を少し削ってでも、子ども2人を望んでいるご夫婦には、その選択肢を残してほしいと考えています。
家は大切です。
ただ、家を買うことが人生の目的ではありません。
家を建てた後の暮らしがあり、子どもが成長していく時間があります。
だからこそ、住宅予算を調整することで2人目を迎える余地が生まれるなら、そうした選択肢も一緒に考えたいと思っています。
一方で、現実には、生活水準を落としてまで子どもを増やすくらいなら、1人にする、あるいは子どもを持たないという選択を望むご夫婦が多いです。
それもまた、そのご家庭の価値観です。
これでは社会全体で子どもが増えることは難しいでしょう。
FPが一方的に、子どもは2人いた方がいいと勧めるわけにはいきません。
だからこそ、難しいのです。
現場で日々ライフプランを作っているFPが、子育て支援の政策を考える会議などに参加できれば、違った視点を提供できるのではないかと思うこともあります。
既にそういうことは行われているのかもしれませんし、参加したところで乗り越える壁は多そうではありますが、それでも、家計の数字を通して見えてくる現実を、私たちFPがもっと政策に届けられたらいいのになと思います。