執筆者:昆 知宏
仕事のなかで私はいつも、「時間をどれだけ有効に使えるか」を模索しています。
相談業務、書類作成、授業準備、SNSやブログでの発信…。
日々こなすべきタスクは思っている以上に多く、油断していると1日があっという間に終わってしまいます。
今年は特に春から大学での講義を担当するようになったことで、業務量が一気に増加。当初は慣れない準備に追われ、「正直、引き受けなければよかったかも…」と思うほど苦戦していました。
ですが、少しずつ自分なりのやり方が見えてきて、「90分授業の80%を意識する」という工夫を取り入れてから、ぐっと楽になったのです。
「90分の80%」で設計することで得られる安心感
学生が90分間集中し続けるのは、受け手の立場からすると想像以上に大変。
そこで私は、「全部を詰め込もうとしない」ことを意識するようにしました。
授業は90分ですが、最初のころは“90分まるごと”の内容を詰め込んで準備していたんです。
でも、実際に話してみると、補足したくなったり、学生の反応を見ながら調整したくなったりで、時間が足りなくなることが多発。ときには駆け足で終わらせることもあり、なんとも後味が悪い授業になってしまいました。
そこで思い切って「80%=72分で終わる内容」で組み立てるように変更しました。
大学にお願いしてシラバスも途中変更をしたのです。
すると、授業がとてもスムーズに進むようになりました。
実際には70分で終わることもあれば、少しオーバーして85分かかることもあります。それでも、「時間内に収まる」という安心感と、「余裕があるから深掘りできる」という充実感の両方を得られるようになりました。
この変化によって、テキスト中心ではなくフリートークやアドリブも交えた授業がしやすくなり、自分の言葉で伝える機会も増えてきたのです。それが授業の手ごたえにもつながっています。
タイムチャージ相談の方こそ「80%設計」を
この「80%設計」、実はFPの仕事にもピッタリだと感じています。
特に、タイムチャージで個別相談をしている方にとっては重要な視点になるはずです。
たとえば60分の相談枠。多くの方が「60分分みっちり話す」内容を準備してしまいがちですが、これはかなり綱渡りです。
というのも、相談者の話に耳を傾ける時間、理解度に応じた補足、ちょっとした雑談やアイスブレイクなど、実際の進行はとても流動的。話す時間は予定どおりにはいきません。
だからこそ、「48分で終わるつもり」で準備しておくのが理想。ゆとりを持って臨めるし、本当に伝えたいことを深く伝えることができます。結果として、相談の満足度も高まるという実感があります。
「余白」から深い信頼を生くむ
もう少し実体験を交えてお話しすると――
私は、本質的なアドバイスはなるべく短く、相手の話をじっくり聞く時間は長いほど良いと感じています。
こちらが一方的に話して時間を埋めようとするのはNG。けれど、相手の話が止まらなくなって結果的に時間が延びるのはむしろ大歓迎です。
私の場合、基本は「60分相談」という設定にしていますが、実際にはスケジュール上90分確保しています。次の予定がなければ、2時間近く話すことも珍しくありません。
大事なのは、「余白があることで相手が安心して話せる空間ができる」こと。
その場での信頼関係が築きやすくなり、結果として次のご相談や紹介にもつながっていくのです。
だから私は、自分の話は早めに終わらせる設計にしておく。そのうえで生まれる余白の時間をどう使えるかが、質の高いコミュニケーションや仕事の成果に直結していると実感しています。
80%設計は、クライアントのためだけではありません。
自分のメンタル的なゆとりを守る仕組みでもあります。
時間に追われることが減り、結果的に質の高い仕事が継続できるようになる。これは、独立系FPとして長く続けていくうえで欠かせない視点です。